ハロー!やかです。

「銚子に移住して来ました」と言うと、地元の方には驚かれることがとても多いです。ただ、ありがたいことに「ようこそ銚子へ!」と歓迎してくださる方が本当に多く、銚子の人々のあたたかさに日々支えられております。

実際、私たち一家のように銚子に移住してきた方は他にもいらっしゃるのでしょうか?

薬剤師として働きながらヨガクラスを開催しているもえのさんは、私が出会った移住仲間の1人です。彼女はいま、銚子という新たな土地で自分の生き方を開拓しています。

彼女と知り合ったきっかけはInstagram。しなやかにヨガのポーズを取るもえのさんの投稿が目に止まり、気がつけばもえのさんの投稿を追いかけていました。

写真を見る限りでは、穏やかで優しそうな印象のもえのさん。なぜ彼女は銚子に移住してきたのだろう?彼女は一体どのような人なのだろう?思い切ってもえのさんにInstagramでメッセージを送ったところ、彼女も私のInstagramの投稿を見ていてくれたことが分かり、会話が弾みました。こうして私ともえのさんは、同世代の移住仲間として出会うことになったのです。

今回は移住者・もえのさんの銚子暮らし、ヨガとの関わり、薬剤師のお仕事、そして彼女にとってのブルーバード(幸せの青い鳥)をお聞きしました。

取材:イノウエアヤカ/加瀬功樹 編集:イノウエアヤカ

【目次】
▼移住と同時に就職&結婚 移住新婚夫婦のチャレンジ
▼ヨガと薬剤師を両立するための ”自分らしい働き方”
▼薬剤師がリードするヨガクラス
▼アットホームな空間づくり 理想は結婚式?
▼もえのさんにとってのブルーバードとは?

▼移住と同時に就職&結婚 移住新婚夫婦のチャレンジ

もえのさんは東京都品川区の出身で、関東一長い商店街として知られる戸越銀座のほど近くで生まれ育ちました。都内のなかでも比較的”下町”と呼ばれる地域です。

2022年1月に、東京から銚子へ移住。きっかけは夫・祐也さんの就職です。祐也さんとは大学時代にゼミの研究室で出会いました。大学卒業後、祐也さんは大学院へ進み、もえのさんは病院で薬剤師として働き始めます。

祐也さんはしばらく大学院の研究室に在籍していましたが、2020年11月にヤマサ醬油(本社:銚子市新生町)の医薬・化成品事業部への就職が決定。就職と共に銚子へ移住し、もえのさんと入籍されました。

新婚生活と同時に銚子に移住したもえのさんと祐也さん。夫婦ともに、これまで銚子とは縁もゆかりもありません。

ーー銚子に移住することが決まった時、どう思われましたか?

もえの:製薬関係の研究所は地方にあることが多いので、夫と結婚するなら「いくつか地方に行く可能性もあるだろうな」と思っていました。

銚子は都内からもギリギリ行けなくないですし、スーパーもあるので生活にはそれほど困っていません。むしろ『どうせ行くならやりたいことを全部やろう!』と思って銚子に来ました。

知らない土地で暮らす不安感よりも、新生活に対する期待感の方が強かったもえのさん。彼女にとって銚子行きは、”移住”という意識よりも、結婚を機に東京を出たという感覚の方が大きかったようです。

ーー東京と銚子の生活で、何か違いを感じることは?

もえの:地元だから、もちろん東京は好きです。でも、都会の忙しない日々や人間関係に生きにくさを感じることもあり、少し離れてみたい気持ちもありました。

東京にいた頃は、出勤の日は仕事でいっぱいいっぱいで、休日も予定を詰め込めるだけ詰め込んでました。銚子に来てから一番感じることは〈余白〉が出来たことではないでしょうか。

 

▼ヨガと薬剤師を両立するための ”自分らしい働き方”

もえのさんは現在、市内の調剤薬局で薬剤師として働きながら、休日を利用してヨガのレッスンを行っています。

ーー薬剤師とヨガインストラクターの両立において、どのような働き方をするかは重要になってくると思います。

もえの最初からフルタイムで働くことはリスクがあると感じていました。知らない土地で、ライフスタイルがどうなるのか分からなかったので。

ただ、知らない土地だからこそ、「これまでの自分にとらわれず、新しいライフスタイルを作れるチャンスだ!」と気がついたんです。「せっかくならやりたいことにチャレンジしてみたい!」大好きなヨガができる時間が欲しいと思い、仕事は週4日の勤務にしました。

また履歴書に「今後ヨガの知識を予防医療に役立てたい」と書いたところ、面接担当の方から「やってみたら良いよ!」と前向きな反応をいただき、今の会社に入社を決めました。

初レッスンは職場のスタッフに集まっていただき、開催することができました。

お話を聞きながら、もえのさんのヨガへの情熱を感じるとともに、職場の理解や周囲からのサポートがあって実現できていることが伝わってきました。

ーー職場の方に対してレッスンをしたことで、何か得るものはありましたか?

もえの:うちの薬局は店舗が複数あります。基本的には店舗ごとでの業務のため、今まで交流がなかった同僚とのつながりが生まれました。顔見知りのスタッフが増えて、お互い仕事がしやすくなった気がします。

ーーそれは会社にとっても良い取り組みになっていますよね。実現できたのは社長の理解が大きい気がします。

もえの:実はうちの社長は、薬剤師ではないんです。あくまでも経営者。だからこそ、面白いと思ったことはやらせてくれる。その社風に魅力を感じて、今の薬局で働くことを決めました。今後は薬局内にチラシやポスターを掲示したいと思っていて、現在交渉中です。

DELKUI大学生インターンの加瀬くん(右)の取材に応じる、もえのさん(左)。「働く」をテーマに学ぶ彼に、薬剤師の仕事について教えていただきました。

自分らしい生き方を後押ししてくれる職場環境があることは、いま社会課題となっている〈女性の働き方〉においても、大変明るい環境だと思います。

新婚のもえのさんにとって、これから出産や育児といったライフステージの変化に応じて、働き方やヨガとの向き合い方も変わる可能性があります。企業側の柔軟な考え方が働き手の可能性を広げ、今後の活躍次第では新たな事業展開に結びつくチャンスになると感じました。

▼薬剤師がリードするヨガクラス

もえのさんのヨガクラスでは、最初からポーズを取ることよりも身体をほぐしリンパの流れを良くしていく『セルフマッサージ』の時間を長めに取っています。

この日は千葉科学大の学生さんがレッスンに参加しました。男性の参加者もおり、もえのさんのクラスでメンズ第1号です。

もえの足の指やふくらはぎ、肩や首周りの筋を優しくさすって動きを良くしてからヨガのポーズにはいっていくようにしています。しっかりほぐしてからポーズを取ると、ポーズの取りやすさ、心地よさが違うなと感じています。参加者からも好評で、ホームケアに取り入れられるので学びを持ち帰ってもらえると思います。

私も実際にもえのさんのヨガクラスに参加してみましたが、薬剤師としての知識や経験がヨガに活かされている実感がありました。骨の構造やリンパの流れ、血流の動きを理解したうえで、参加者1人1人に合ったヨガを丁寧に伝えている印象を受けました。

レッスン後のもえのさん(右)と、血流が良くなりぽわぽわしている筆者・やか(左)の様子。

もえの:仕事柄、何かしらの悩みを抱えた方と毎日接しています。患者さんを見ると「みんな一回ヨガやってみない?」と思うことがあるんです。身体が軽くなったり、気持ちが明るくなるかもしれない。ヨガの心と身体を整える効果はもちろん、誰かと一緒にポジティブな時間を共有できることで人生が豊かになると感じています。自分は「先生」という立場より、その空間を共にできる「仲間」でありたいです。

 

▼アットホームな空間づくり 理想は結婚式?

もえのさんが目指すヨガクラスの”空間”とは、どんなものなのでしょうか?その理想形としているのは、自分たちの結婚式だそうです。

もえの:私と夫はゼミの研究室で出会ったこともあって、教授も含めて仲間がたくさんいたんです。それがコロナ渦で散り散りになってしまい、同時期に教授も退官してしまって、研究室もなくなってしまいました。

だからこそ、結婚式は同窓会をテーマに開きました。みんなが心の底から楽しんでくれて、「やってくれてよかった!」と言ってくれてたことが嬉しかったです。みんなの笑顔が見れたことが本当に幸せでした。

その時に「ヨガでも同じ空間が作れたらいいな」と思ったんです。ヨガでも、みんながリラックスしてポジティブな空気感が漂うと、魂から満たされる時があります。誰かが笑顔で楽しんでいる姿が見れた時、自分も役に立てたのかなと思えました。

一見すると全く共通項がないような〈結婚式〉と〈ヨガ〉。しかし会場の一体感や高揚感を共有したあと、フィナーレに向かう静けさや感動は一つのドラマのよう。終わったあとの多幸感は、同じ時間を共有した人たちにしか分からない体験があるように思います。

もえの:本当は、人前に立って何かするのは得意ではないんです。でもヨガに出会って、ありのままの自分でいていいと教わってから、リラックスした状態で素の自分と向き合えるようになりました。そうしたら、自分は本来楽しいことが好きなのかもしれないと気づいたんです。

ヨガは自分がやりたくてやっているので、正直自分のためにやっている部分が大きいです。でも自分も整って、みんなもヨガでリラックスできれば、やりがいを実感できるのかなと。

私たちはあいまいな中で生きているけれど、上辺じゃなく、心の底から笑って、リラックスできると良いなと思います。その場に自分もいて、誰かの幸せに役立てたら嬉しいです。

 

▼もえのさんにとってのブルーバードとは?

ーー最後に、もえのさんにとってのブルーバード(幸せの青い鳥)とは何でしょうか?

もえの:私にとってのブルーバードは『大切な人 みんなのしあわせ』です。大切な人とは、家族はもちろん、周りの方みんなです。みんなが楽しくなる場所をつくりたいというのが一番大きいと思います。なぜなら、一緒に過ごした人たちが「楽しい」とか、「リラックスできた」といったポジティブな感情が生まれることで、私も喜びや幸せを感じられるからです。
周りの人たちの幸せが、私に幸福感を運んできてくれる「幸せの青い鳥」なのかな、と今は感じています。みんなの間で幸せの青い鳥が飛び交うような、そんな場所を作ることが私の夢です。

 

もえのさんは、相手に対して「幸せにしてあげたい」とか「こうすれば良いのに」という押しつけではなく、純粋に「自分がやりたくてやっているだけ」なのだと感じました。

柔らかく、穏やかな雰囲気をまとった彼女が、なぜ凛と美しく自らの道を進むことが出来ているのか?その答えは、彼女が自分に対して素直に生きているからなのだと思います。

 

次回は、もえのさんがチャレンジするきっかけとなったヨガインストラクターの後藤ユカリ先生と、もえのさんの夫・祐也さんにインタビュー!お二人から見たもえのさんの人柄を探ると共に、もえのさんのキーマンであるユカリさんと祐也さんにとっての〈ブルーバード〉もお聞きしたいと思います。

どうぞお楽しみに!

やか/イノウエアヤカ

1992年生まれ。横浜出身・銚子在住。
2011年、大学入学時にロックバンド・phonegazer(フォンゲイザー)を結成。ボーカルとして作詞・作曲を担う。同年、音楽ライターとしてフリーで活動開始。2015年にライブハウスシーン情報サイト・OTOZINEを創設、編集長を務める。2016年のバンド解散後、広告制作プロダクション、業界新聞、地方公務員へと転職し、クリエイティブと地域活性化の関わりに関心を持つ。
結婚、出産、実母の急逝、心身の不調などが続き、2022年10月、千葉県銚子市へ移住を決意。現在、脱サラ漁師の夫と長男の3人で、スローライフを大切に人生をリスタートしている。